【空蝉】(うつせみ)
苦し紛れに呟いてしまった
なにか言葉を当てたくて
このふわりと漂う感情に正解と言わんばかりの言葉を
当てはめてしまいたくて、
それがどんなに酷い言葉かだったなんて
全てを吐き出してから気がついた。
僕にとっては希望のような言葉でも
受け取る君にとっては絶望となる。
そこまで思慮深くいられるほど、今の僕には余裕が
無かった。
君が居なくなった部屋は途端に冷気を帯びて
暗澹(あんたん)立ち込める。
容赦の無い独りの寂しさを今君も味わって居るのだろうか。
この前会った時は僕は確かシーツを汚してしまって
君をとても驚かせたね。
この空間は白がとても多くて嫌になる
僕の左に並べられた器機達の電子音だけが聞こえてくる。
入ってくる人達の笑顔の奥には憐れみがある気がする
僕はきっと、今年の蝉の声を聞くことは出来ないかな
ぼんやりそう思う。
暗くなっているのは今朝の君の顔がどうしても浮かんでしまうからだ
器機達がけたたましい音をあげて鳴り出した。
とてもうるさいはずなのに、音が白い壁たちに吸われていくように小さくなる。
あぁ、
そういえば君に最後に言った言葉、、なんだっけ。
そうだ、、そうだよ。僕は願いを込めて言ったんだ。
「また、あした」
5/22/2024, 4:08:53 PM