青波零也

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 あの子は神様のもとに行ったんだ。
 だから、忘れるしかないよ。いくらあの子の名前を呼んだって、帰ってくることはないのだから。
 ……と、言われて諦められるなら、私は今ここにはいないと言い切れる。
 黄昏時の空に消えていった片割れの行方は、数多の『異界』を観測してなお不明。それでも私は望みをかけて今日も「生きた探査機」Xを『異界』に送り込む。
 しかし、そう、私の目的を知ったXはこう言ったのだ。
「もし、妹さんに出会えたら、何を伝えますか? あなたの存在と、妹さんを探しているお話はもちろんお伝えするつもりですが、言いたいことは、いくらでもあるのでは?」
 ごくごく真摯な目で、ごくごく当然のように。
『異界』に潜れるのはXのみ、当然メッセージもXづてでしか伝えることができない、それはもちろんそうなのだが。
「……すぐには、思いつかないわ」
 諦めずにはいられたけれど、叶う可能性が出てくるなんて思ってもみなかったから。
 私は、未だに片割れにかけるべき言葉を見つけられないままでいる。


20250317 「叶わぬ夢」

3/17/2025, 12:09:38 PM