27(ツナ)

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「巡り逢い」

この世界の人間は何度も何度も死んでは生まれる"輪廻転生"を繰り返している。
ただ、前世の記憶を持つ人間はほとんどおらず、覚えていても成長とともに忘れてしまうらしい。
私も幼い頃、人より前世の記憶がハッキリしていたが、やはり成長とともにその記憶は遍く失われてしまった。

ある日、私は買い物に他県まで遊びに行き、そこで同い年くらいのある女性とすれ違った。
すれ違った瞬間、ビリッと静電気が走ったような不思議な感覚を感じて振り返ると、彼女も私を見ていた。
その瞬間、忘れていたはずの前世の記憶が走馬灯のようにバーッと頭の中を駆け巡った。

あれは、江戸時代。貧乏人だらけのボロ長屋の一室、彼女は私の妻だった。
妻と二人慎ましやかな生活を送っていた。
そんなある日、私は窃盗というあらぬ疑いをかけられ、冤罪のまま奉行所へ連行され、打首となった。
最後まで、妻は無罪を訴え私の首が切られる寸前まで泣き叫び、慈悲を請いていた。

私の記憶の走馬灯はそこで終わった。
私の目からは涙が流れ、人目も気にせず、彼女を抱きしめていた。
「やっと会えた。お礼を伝えたかった。最期までありがとう。」
「…貴方を救えなくて、ごめんなさい。会いたかったわ。」
彼女も記憶を思い出したのか、私の背中をギュッと抱き締め返し、涙を流した。

という、不思議な巡り逢わせのお話。

4/24/2025, 11:13:30 AM