死にたい少年と、その相棒

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  /それでいい

 天井からぶら下げたロープに首をかけ、勢い良く椅子を蹴った。
 今日は完璧だ。
 選び抜いた頑丈なロープ。解けないよう何重にも結んだ結び目。体重をかけ続けても落ちないよう、わざわざ天井に金具まで取り付けた。

 気道を絞めず、しっかり頸動脈へロープを置き、あとは勢い良く足を宙へ投げ出した。
 一瞬の衝撃と痛み、そしてそのすぐあとに感じる、意識が沈んでいく感覚。

 あぁ。やっと。やっと成功した。
 望んだ死に、笑みが溢れた。



 ギィ、と軋んだ音を立てて揺れるロープをナイフで切る。重く、鈍い音を立てて床に落ちたアイツに、意識は無い。
 首にはっきりと付いた絞首の痕が随分と痛々しい。
 だが、死んだとは思わなかった。
 首が絞まりすぎたのか、体が痙攣を起こし、その刺激でアイツが目を覚ました。
 まるで状況を理解していない目が、ぼんやりと俺を映す。
「はよ。相変わらずしぶといな、手前は」
「……よけい、な……こと……しない、でよ」
 掠れた声が返ってきて、向けられる視点に力が宿る。
 相変わらず、コイツの生命力は相当なものらしい。

「せめて俺の家じゃねぇとこでしろ。止めてくれっつってるようなもんだぞ」
「きみに、ぼくの死体を、みせたいから、それでいいの」
「趣味悪ぃぞ」
 コイツが小さく笑った。

4/4/2023, 10:47:07 AM