小絲さなこ

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「星空が溢れる」



コップが割れたら中身は溢れる。
それならば、人間という器が朽ちたら、その中身はどうなるのだろう。

繋いだ手を握りしめる。
触れた部分の熱が混じり合って、同じ温度になっていく。境目が無くなっていくみたいに。

それでも、どんなに言葉を交わしても、どんなに体をくっつけても、実感がわかない。
たしかに、此処に存在しているけど、それを確かめられるのは見えている部分──外側だけ。


ふたりで見上げる夜空。
地面から足が離れていくような感覚に陥る。
頭上に広がる、数えきれないほどの星空。




「一生、忘れないと思う」

今ふたりで見ている星空も、交わした約束も。

返事は握った手に込められた力の強さ。


どう頑張っても、心はひとつになれない。
それを知ってるから触れたくなるのだということを、私は今夜初めて知ったのだ。




────心と心

12/13/2024, 8:10:30 AM