ミキミヤ

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秋の海辺で独り、空を見上げる。刷毛で掃いたような雲が、空高くに広がっていた。海鳥が、上空の風に煽られまいと力強く飛んでいる。
なんでこんなところに独りなのか?
それは、ちょっとセンチメンタルな気分だからだ。


3年付き合った彼氏と別れた。理由は、お互いに飽きたから。何となくデートして何となくキスをして何となく抱き合って……。そんな日々がもう何ヶ月も続いていた。ただ惰性でしかなかった。ふたりともとっくに、この恋は終わってることに気づいていて、見て見ぬふりをしていた。自分から言い出して終わらせるのが、何となく怖かった。
別れた日は、付き合って3年の記念日だった。1年前はふたりとも本気でお祝いしたものだけど、今回はその気にならなかった。潮時だった。
2人で入ったカフェ。2人分のホットコーヒーが少し冷めて飲みやすくなった頃、私は「もう終わりにしない?」と言った。彼は「俺もそう言おうと思ってた」と返した。たったそれだけのやりとりで、私たちの関係は終わった。


この海岸は、ふたりが出会った場所だった。出会ったのは暑い季節だったけれど、今は秋らしく涼しい。風があるせいでむしろ少し肌寒いくらいだった。
付き合った頃は、ふたり、ずっと一緒にいるんだと思っていた。
昔の気持ちを思い出して、変わってしまったことを痛感する。
別れたことに後悔はないけれど、寂しさはあった。

ひとつため息をついて、海に背を向け、歩き出す。
向かい風に逆らって、前に進んだ。

11/15/2024, 7:58:26 AM