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初めての一人暮らしは、始まりから散々だった。
急な内示から始まった家探しは、祝日休みの不動産屋、土砂降り、長時間の運転と、なかなかな滑り出し。
なんとか見つかった内見は、薄らぐらくて外装ヒビだらけの六畳一間。この片田舎でオール電化とは何事か。(個人的偏見を過分に含む。)
こちとらうら若き乙女であるからには、
譲れぬものもあるのだ。せめて脱衣所は欲しい。

なんやかやあって、外装と間取りの写真だけで決めた八畳一間(脱衣所と独立洗面所付き)に入居したのは本日の午前九時のことである。
ちなみに、五階建てのこの建物にエレベーターなんていう文明の利器はない。やはり裏切らないのは筋肉だけなのである。裏切るほどについていないけれど。
荷解きやら、ガスの立ち合いを済ませ、一息ついた頃にはもうへとへとであった。

ようやく風呂に入って、ベッドの上に倒れ込んで、
今日はよく眠れるだろうと布団をかぶってはや三十分。
これが全く寝付けない。
何故だか逆に目が冴えてくる始末。
あの、眠りに落ちる一瞬がどうやったって訪れない。
手洗いは済ませた。寒いわけでも、暑いわけでもない。
寝る前に怖い話を読んでもいないし、
コーヒーなんてまだ家にない。

そんな不安をぼんやり言語化するとすれば、意識を落とす刹那、己の無防備を晒せる安心感を失ったのだろう。
いつか、状況に慣れて、この家でだって眠れるようになるだろうが、自分一人で立っている自信に他ならず、これまでのような包まれる安心を得ることは不可能になるのだろう。

眠気の訪れを待つために温かいお湯を沸かすこととし、覚書とする。

4/28/2024, 4:31:47 PM