一夜の夢

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初めてタバコを吸ってみた。
全然美味しくなんてなかった。
肺をいっぱいにする煙のせいで咳が止まらなくなって、涙と鼻水が勝手に出てきた。
すぐに灰皿にタバコを押し付けて、火を消した。

顔をぐしゃぐしゃにしたまま、部屋の隅で小さくなって、しばらくそうしていら、お風呂に入りたくなった。
タバコの匂いが残るリビングから逃げるように、熱いシャワーを浴びた。

いつものタバコが箱に1本だけ残っていたから、彼の痕跡を消したくて吸ってみた。
余計に思い出してしまった自分は馬鹿だと思う。
彼の好みだから伸ばしていた髪も、今はただ水を吸って重いだけだった。

もう何も考えたくなくて、灯りを消してベッドに入る。
彼も自分も面倒くさがりで、取り込んだ洗濯物をそのままベッドの上に放っていた。
自分のも彼のも一緒くたに、たくさんの布がそこら中に散らばっている。

手探りでその一つを引き寄せた。
それが何か、見えなくてもわかった。
彼が置いていった からし色のセーター。
洗っても洗ってもタバコの匂いがとれなくて、結局二人とも諦めた。

セーターに顔をうずめた。
ちくちくした生地が心地よかった。

まだ、タバコの匂いがする。彼の匂いが。

11/24/2023, 4:06:50 PM