誰だもが知らずの語り屋

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🌈異世界譚『虹の架け橋』

第一章:風の止まる刻(とき)

風が止まった。
それは、世界が息を潜める合図だった。

空に七色の弧がかかるとき、
忘れられた者たちの声が、
この世とあの世の狭間に響き渡る。

「虹が架かるのは、誰かが“帰りたい”と願った証」
そう語ったのは、葉を纏う旅人だった。

彼の背には、冬の記憶を宿した羽根。
その瞳には、秋の終わりを見つめる光。

虹の向こうにあるのは、
かつて交わした約束か、
まだ見ぬ再会か。

それとも——
“世界の終わり”を告げる鐘かもしれない。

---

第二章:七色の門

虹は静かに揺れていた。
風の止まった空に、まるで誰かの呼吸のように。

その橋を渡れるのは、
“記憶を失くした者”だけだという。

名を忘れ、帰る場所を忘れ、
それでも心の奥底に“誰か”を探している者。

——彼女は、そうだった。

白銀の髪に、秋の葉を編み込んだ少女。
瞳は冬の湖のように澄み、
声は風のように儚い。

「虹の向こうに、私の名前がある気がするの」
そう言って、彼女は一歩を踏み出した。

虹の第一の色は“紅”。
それは、失われた約束の色。

第二の色は“橙”。
それは、かつて交わした誓いの温もり。

第三の色は“黄”。
それは、笑い合った日々の残光。

七色を渡るたび、彼女の胸に
誰かの声が、誰かの手が、誰かの涙が
少しずつ戻ってくる。

そして、最後の色“紫”に触れたとき——
彼女は、名を思い出す。
その名は、かつて“風”と呼ばれた者。

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第三章:風の名を持つ者

虹の向こうに広がっていたのは、
“風が記憶を持つ世界”だった。

空は深い藍に染まり、
地には七つの季節が同時に息づいていた。

春の花が冬の雪に包まれ、
夏の陽が秋の葉を照らす。

この世界では、時間は“感情”によって流れる。
誰かが強く願えば、季節が変わる。
誰かが泣けば、風が止まる。

そして——彼は、ずっと風を止めていた。

「彼女が、虹を渡るまで」
そう言って、彼は七色の門の前に立ち続けた。

彼の名は“カゼ”。
かつて、少女と共に歌を紡いだ者。
彼女が“風”と呼んだ、唯一の存在。

彼は、少女の記憶から消えることを選んだ。
それが、彼女を守る唯一の方法だったから。

だが今、虹が架かった。
彼女が“帰りたい”と願った証。

風が再び吹き始める。
七つの季節が、彼女の歩みに応えて揺れる。

そして、門が開く。
再会の瞬間が、世界の“終わり”と“始まり”を告げる。

---

第四章:再会の詩(うた)

彼女が最後の色を踏みしめた瞬間、
風が歌い始めた。

それは、かつてふたりが紡いだ“卒業の歌”。
別れを越えて、再び巡り合うための旋律。

「風よ、私を覚えていてくれたの?」
「君が忘れても、僕は忘れなかった」

ふたりの声が重なったとき、
虹は光の粒となって空に溶けていく。

そして、世界は再び動き出す。
七つの季節が、ひとつの物語となって。

風は吹き、葉は舞い、
冬は終わり、春が始まる。

それは、再会の物語。
それは、記憶の架け橋。
それは、輝夜が紡いだ——
“虹の神話”。

(_ _;)スミマセン…今日もなんかいい感じのが書けなくて……

9/21/2025, 12:38:53 PM