【どうして】
料理そのものは多分母親の方が上手だったように思う。例えばそれは技術的なものや、盛り付けひとつとっても。
だがどんなに豪華で綺麗に盛り付けられた飯でも、それを食う俺は独りきりだった。
そんな風に育ってきたから、正直食事なんて空腹を満たす事さえ出来ればそれで良い、その程度にしか思ってなかったんだが。
『……美味い』
『本当? 良かった』
アンタの部屋で、アンタの作る飯を一緒に食うのはどうして、あんなにも美味かったのか。
どうして俺の心は幸せで満たされたのか。
生きる事自体、正直どうでも良いとすら思っていた俺が、初めて知った日常の中の幸せ。
それは、いつも傍らで微笑んでくれるアンタとだから感じる事が出来て、分かち合えたんだな。アンタを喪った今なら判る。
「命日くらい、夢でも良いから俺のとこ来いっての」
嗚呼、アンタの作った飯が食いてえなぁ。
1/14/2024, 12:54:20 PM