『日の出』
生まれてこのかた、初日の出を見に行ったことがない。
なにせ寒いので。
そう、あの寒さの中、身を切るような未明の空気の中で、ゆっくりと昇ってくる太陽を待っていられないのだ。
なにしろそれはもう、寒いので。
ありがたさや神々しさを感じる前に凍えてしまう。
経験者である友人に聞いたところ、太陽が姿を見せ始めたあたりから、じわじわと暖かい光に体が包まれていくのが、生き物としての根源的な何かを感じさせて感動するとかなんとか。
とりあえず、霊感商法やセミナーなどに気をつけるように、高い買い物や契約を結ぶときは即決せずに一旦持ち帰って家族や周囲の人間に意見を聞くように、と注意しておいた。
日の光を浴びるだけで幸せになれるのは良いことだが、少々迂闊なところのある友人なのだ。
半魔のヴァンピールだから太陽に耐性があるものの、まったくの無傷というわけでもないのに、困ったものである。
1/4/2025, 9:16:43 AM