題-誰も知らない秘密
トン トン トン ザクッ
「あっ、」
夕飯を作るためにキャベツを切っていたら、
指を間違えて切ってしまった。
しかも、結構ざっくりと。
「…取り敢えず、止血」
傷口を押さえて、なんとか処置はできた。
「………、」
今世は、一度も痛みを感じたことがない。
というより、前世も、であったが。
精神的なストレスで、とか
病気、であったりとか
病院に行っても判明はしなくて
「……っ、」
恐らく、これは、呪いだろう。
今世だけでなく、前世でも痛みを感じなかったんだ。
「大切な、一つ、なのに」
痛みは、誰だって嫌だろう。
でも、痛い、という感覚は、大事な感覚だ。
僕が、まだ、人間じゃなかった頃。
常に体中が痛みに包まれていた。
何時だって、身体は痛かったのに。
「…こんなんで、アイツを守れるのか…?」
僕よりも弱いくせに、僕を背に、
守ってくれたアイツ。
どんなに危ないと言っても、
首を縦には振らなかった。
『君が好きだからさ。格好つけさせてよ。』
前世は、そう言ってアイツは死んだ。
痛かったろうに、苦しかったろうに。
辛かった、だろうに
「………ぁ」
僕は、何故、気づかなかったのだろうか。
「っ、なんで庇った!!」
目の前の彼はそう、僕に叫ぶ。
僕が彼の言葉に返事をしようとすると、
「ゴホッ、」
「!!」
喉の奥から何かが這い出てくる。
鉄の、味がした。
「もう、いい。」
「…」
「はなさなくて、っいいから」
彼が、珍しく泣いていて。
「ケホッ…」
「…!」
こんな状況にも関わらず、愛しいな、と思ってしまった。
彼の頬に手を伸ばすと、彼は目を見開いて、
僕の手に触れる。
触れた彼の手は震えていて、弱った彼に少し微笑む。
「、み…っ、る」
「!、なぁに、かな、と」
今回は、僕が死ぬ。
だから、来世は、彼を、望晴(みはる)を忘れるだろう。
「ら、いせは……」
どうか、ぼくをみつけてね。
あいしてる
僕は、彼の温かさに包まれながら
意識を薄めていく。
来世はどうか、彼と幸せになりたい。
もし、また、殺されそうになったら
僕が死にたい。
誰よりも、何よりも
[生きる]事を望んでいた僕が
初めて、[死]を望んだ日。
2/8/2025, 6:13:22 AM