衣擦れの音。
俺は暗がりから起き上がり、得物を手に息を潜めた。
全く油断も隙もない。この世界は殺るか殺られるかだ。
最近は身辺整理をし、狙われることも無いと思っていたのだが、甘かったようだ。
奴らはどこにでもいて、俺が1人でいることを許さない。
こちらの居場所がバレないよう、光源を使わずやつの居場所を探す。
今日は運がいい。奴は高い場所で待機している。
あの高さではこちらは死角だろう。
だが、俺は甘かったのだ。
獲物を追う時が、一番危険だということを忘れていた。
ほぼ真下に構えた瞬間、顔に触角付きの黒いベトベトした塊がぽとりと落ちる。
今回は俺の負けだ。
視界が揺らぎ、俺は泡を吹いて倒れた。
お題「暗がりの中で」
10/28/2023, 1:58:18 PM