神崎たつみ

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#生きる意味

 僕の存在にどう言う意味があるのだろう。
 そんなことを幼い頃から考えていた。僕は人形。『僕』という人間を見てくれている人なんていない。きっと多くの人は僕に意思がない方が良いのだろう。ただただ器が綺麗で中身のない存在。それがこの世界に望まれている僕という存在なのだと、周りを取り巻く大人の言葉から刷り込まれていく。
「お仕事嫌だなぁ」
 小さいときは気付かなかった視線の意味が徐々にわかってきた。そしたら、何もかもすべてが嫌になってしまう。大好きなお母さんもきっと同じ。僕がお仕事をしてお金を稼いでくる。だから僕という存在は大事だけど僕の中身なんか見てくれないんだ。そんなことに気付きたくなかった。とても悲しくなってしまう。だけどお母さんがご飯を作ってくれていたことも、お母さんもお仕事を頑張ってくれていたことも同じくらいにわかっているから、だからお母さんのことは嫌いになんてなれない。それでやっぱり僕も頑張らないと、と頭では思うのだけど、身体が動かない。
 こんな僕の存在に何の意味があるのだろう。日々思う。何かきっかけがあればきっと。

 そう思い続けた日々から抜け出して、ようやく今僕は僕の存在の意味を理解出来てきたような気がする。少しづつ周りを見ることが出来るようになって、お母さんは僕を見ていなかったわけじゃないことを知った。心配してくれていたけど、お母さんにも余裕がなかったんだね。家にお母さんだけになったからなのか、多分生活にも余裕が出来たのかな。ステージから見える席にお母さんの泣き顔が見えた。そんな顔しないで欲しい。僕はここに立つことが出来て幸せなのだから。

4/28/2023, 5:42:08 AM