お題『暗がりの中で』
文化祭の出し物で、おばけの役をやることになった。でも、オレ、おばけ苦手なんだよ。
小学校の修学旅行でやった肝試しなんて、女子の後ろに隠れながら叫びまくってたのは黒歴史。以来、テーマパークのお化け屋敷なんて入れないし(それで友達に無理矢理中に引っ張られて泣きを見た)、ホラーゲームなんてプレイできない。配信見てるだけできついからだ。
そんなオレがおばけ役をやることになった。なんでも文化祭実行委員兼リーダーである友達に『オマエがおばけやったら絶対に面白い』って言われてクラス中がそういう雰囲気になったから。
オレは、しぶしぶメイクが得意な女子からの特殊メイクをほどこしてもらって、自分の顔が顔が半分焼けただれて溶けてるゾンビみたいになってて、自分で鏡みて思わずひっと声をあげた。友達がニヤニヤしながら「やっぱ最高じゃん」と言いながらこっちを見てきて、「くそぉ」という気持ちになりながらも配置につく。
暗いカーテンの中からおどかすって役どころなんだけど、そこがもう暗くて暗くてオレのほうが震えてる。
そうこうしているうちに最初の客が入ってきた。別のクラスの女子二人だ。それでも暗がりのなかに人がいるという状況がすでに怖い。
その子達が目の前に来た途端、オレは「ウワァァァ」とゾンビっぽい声を上げながら出てきた。その瞬間、女子達が悲鳴をあげる。その悲鳴が怖くて俺も「イヤァァァァァ!」と悲鳴をあげる。
その後もそういうことが繰り返され、気がつくと一日目があっという間に過ぎていった。
2-Bのお化け屋敷すごく怖いね、おばけも叫ぶんだよって噂が聞こえてきたけど、オレからしたら客も怖い。本当に怖い。だって暗いところから急に人が現れるんだよ?
放心状態になっているオレに友達が肩に手を置く。
「大盛況だった! 明日もよろしく!」
ばしんっと肩を叩かれ、オレは明日も続くという事実に膝から崩れ落ちた。
10/28/2024, 11:36:25 PM