yuzu

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雪が降り積もった冬のある日。
朝焼けを見に行こうと誘った君の言葉に乗って、まだ空に月が浮かんでいる時間に家を出た。マフラーに顔を埋めて寒さから身を守ろうと縮こまる君が差し出した手を握って二人でゆっくりと夜の道を歩いた。
暫く歩いて開けた河川敷に着いた。並んで草の上に腰を降ろしたのは失敗だったかもしれない。二人のズボンに雪がたくさん着いた。
くだらない事を話しながら夜明けを待つ。
「あっ!」
君が小さな驚きの声を上げた。ふと見ると、朝焼けが近づいてきたようで、空が少しずつ明るさを増していた。暫く二人でじっと水平線の彼方を見つめていた。
一瞬のうちに空の色がどんどんと変わっていった。いつもと同じ空のはずなのに、何色もの色を巧みに使い分けて造られた空は、いつもよりずっと綺麗だった。空が藍色から水色に変わって、水色から黄色に変わって、黄色から橙色に変わって、橙色から赤色に変わって、そして最後に朝が来た。
「…綺麗……!」
思わずそう零した君の横顔は数多の色の空の光に彩られていて、つられて思わず零してしまった。
「綺麗…」
ああ、カメラを持ってこなかったのは失敗だったな。カメラさえあればこの時間を永遠に残しておけるのに。ああ、このまま
「時間が止まってくれたらいいのに」





9/19/2023, 5:55:01 PM