クラゲの森

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フィスナとLove You
昔、遠い昔の話。とあるところに、「アンドル」という国がありました。
そこは国民が貧しく、路上で横たわって明日の食事を探しているほどでした。
ですが国王はそんな問題を見向きもせず自分だけ大層な暮らしをしていました。
明日生きられるかどうか分からない国民達は苦しんでいましたがある娘は違いました。
「フィスナ」という娘です。フィスナは国王の実の娘であり、夜になると城の自分の部屋の窓から「Love You」と国民に対して、愛の気持ちを言い続けながらパンを籠に入れ、紐で下に降ろして国民に配っていました。
フィスナの心優しい気遣いに国民達は、毎日夜は城の周りに集まりました。
そんなある日、国王がその事を知ると国王は激怒し、娘のフィスナを処刑するといい始めたのです。
フィスナは牢獄に入れられ、嘆き、悲しんでいました。
国民もフィスナが処刑されると聞くと悲しみました。これからのご飯も「Love You」という美しい声も聞けなくなるというのは国民にとっても辛いことでした。
処刑の当日、フィスナは処刑場に立たされました。
フィスナの服はボロボロで体は赤く腫れ上がっているところがありました。
「それでは処刑を始める」
と国王が言い、剣を握りました。国王自身がフィスナを処刑するのです。
「Love You Love You」
そう国民に愛を伝え続けるフィスナ。
国王が剣を高く上げ、おろそうとした時です。
グサッ
国王から血が出てきました。国民の1人が国王の胸を刺したのです。
それから、国民はフィスナを助けようと国王を襲いました。
数時間もしない内に国王は殺され、兵隊も逃げ出してしまいました。
そして、フィスナは女王となり、国民達と幸せに暮らしました。
「おしまい」
と私が読み終わり息子を見ると息子はスッキリしないような顔で私を見た。
「なんで国民達は国王を殺したの?」
「国王はフィスナを殺そうとしたからよ」
私は息子と目を合わせ、優しく教える。
「なんで国王はフィスナが国民にパンや愛の言葉を伝えただけで処刑しようとしたの?」
私は少し考えて言った。
「魔女だったのかも……しれないわね」
「魔女?」と息子は頭を傾げた。
「例えば、Love Youが魔法の言葉でフィスナが国民に魔法を仕掛けて、国王を殺させて自分が女王になるチャンスを作ったとかね」
息子はそれでも頭を傾げていた。やはり、小さい子にはまだこのおとぎ話は早かったかと自分の心の中で反省する。
コンコン
誰かがドアをロックする音が聞こえる。
「"フィスナ女王様"もう少しで式典のお時間です」
お団子の茶色の髪をしたメイドが私に知らせる。
「さ、行くわよ。」
私は息子の、手を引きながら、"アンドル王国の女王フィスナとして歩き出した"。

2/23/2024, 1:03:59 PM