とある恋人たちの日常。

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 俺が彼女を明確に個人として……いや、意識するきっかけになったのは一つの大好きな飲みもの。それはクリームソーダ。
 
 そのクリームソーダのグッズを配るのが大好きな俺は、以前から怪我をしてしょっちゅう通院してくる彼女と普通に話す仲になっていた。
 
 痛いと悲しそうな顔をする彼女を元気づけたくて、クリームソーダのグッズをあげると、驚くほど満面の笑顔を見せてくれた。
 
 本当に驚いたんだ。花が咲くってこういうことを言うのかなって思うくらいの笑顔だったから。
 
「嬉しい、クリームソーダ大好き!!」
 
 その言葉も俺には嬉しかった。俺の周りにはもうハイハイと流す輩が多かったから。
 
「配るの好きだから、またあげるよ」
「え、嬉しい」
「じゃあ、今度また別のものをプレゼントしよう〜」
「やったー!」
 
 こんな純粋な反応も……正直初めてだったんだ。
 
 そこから俺たちはクリームソーダ大好き仲間になった。
 
 その後、彼女に渡したものが分からなくなって、まだ集めているか聞いた時。彼女は「まだ集めてる」と即答して、宝箱に全部大切にしまってくれていた。
 
「全部が私のたからもの!!」
 
 そう笑う彼女に、初めて見た笑顔を思い出したんだ。花が咲きほこるような笑顔に、胸が高鳴るのを抑えられない。
 
 そして、俺の中で彼女は仲間から、意識する人に変わったんだ。
 
 そんな、小さなきっかけ。
 
 
おわり
 
 
 
二〇八、仲間

12/10/2024, 12:15:56 PM