私が空を見上げる時、空は必ず泣いていた。
今日もまた、薄暗くなった世界の始まりを見上げては、私はじっとその時を待つ。
大粒の涙が顔に落ちては、頬を伝って地面を濡らしていく感覚がした。
どんよりとした雲が真っ青な空を隠して、私には顔すら見せてくれないみたいだ。
「虹は雨と太陽からのプレゼントなんだよ」
あの日の言葉が鮮明に思い出された。
幼い頃のおぼろげな、けれども確かな記憶。
虹というのは、泣いている空を励ますために、太陽が空へ贈ったプレゼントなんだ――なんて、当時の私は本気で信じていた。
けれど光の屈折から発生する自然な現象だと知った今でも、私は雨が降る度につい空を見上げてしまう。
雨が降るだけでは虹はできない。
太陽の光が雨粒に反射することで虹は生まれるのだ。
雨上がりの空に浮かぶ虹は、この世の全てを写し出している気がする。
喜びの色、悲しみの色、驚きの色、怒りの色……それは、七色では数え切れないほど沢山の想いが詰まっているに違いない。
虹は雨と太陽からのプレゼントだ――今ならこの言葉の本当の意味が分かる気がする。
雨はそれまでの自分を洗い流してくれて、太陽がこれからの道を示してくれる。
虹は私に、「大丈夫、仲間はいるよ」と広大な空の下で共に暮らす住人たちを教えてくれる。
独りじゃないよと、上を向く理由をくれる。
これをプレゼントと言わずになんと言うのだろう?
こんなに堂々と語っている私を知ったら、あの人はきっと笑うに違いない。
虹のように弧を描いた二つの目で、優しく私を抱きしめてくれるはずだ。
No.9【君と見た虹】
2/22/2025, 12:34:26 PM