雛朶

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木の板でできた床をゆっくり、
しっかりとしたリズムで歩く。
歩く度に薬品の匂いと横からの風が襲う。
少し歩いた先に花束を持った女性がいた。
泣きそうで、でも強い覚悟をもった顔をしていて
私はあの女性はすごく心が強い人だと勝手に認識した。
彼女の着物はすごく華やかな色をしていて、ピンクの薔薇があちらこちらに綺麗に咲いている模様の着物。
それに比べ私はボロボロの汚れたセーラー服に彼女のように綺麗で何本もある花も持ってはいなく、私が持っているのはひまわり1本のみ。私とは似つかない彼女の横を通るのは少し苦痛だったが私は彼女の横を通り、ひとつの部屋の前でひと息ついた。
ドアを開けるとそこには何人もの兵士さんたちがいて、みんな頭、手、足には包帯が巻かれていた。
その中にも焼けてしまって包帯も巻けず、そのままの状態の方も沢山いた。
私はその中から1人の男性を見つけ、リズムを徐々に崩して、彼に駆け寄る。
彼は驚いたような顔をした後、戦争に行く直前に私に向けてくれた優しい笑みを向けてくれた。
私はあの女性みたいに強い覚悟も泣かないことだってできない。だから私は彼の前でボロボロと泣いてしまって、でも彼は嬉しそうに私を抱きしめてくれた。
彼も帰って来れて泣きたいはずなのに私を抱きしめて、嫌な顔ひとつせず私が泣き止むのを待ってくれた。
私があげたひまわりも嬉しいよなんて言って大事そうに
自分の膝に優しく置いた。
彼と存分に話した後私は帰り際に泣いてしまった。
その時私の視界に綺麗な白いハンカチが写った。
さっきの女性が私にハンカチを差し出してくれていた。
どうぞと言った彼女の笑顔は優しい彼に少し似ていた。

3/30/2026, 4:43:33 PM