喪失感
初めて、うさぎを飼った。黒い毛並みが美しく、焦茶色の瞳に引き寄せられた。潔癖症の性格で少し触っただけでも、毛繕い。
チモシーの葉っぱで作られたお家は、自分でバリバリ引っ掻いたあと、ボロボロの葉っぱを咥えて、ケージの外へぷっと出す。
お散歩をしてもケージに帰ってから必ずトイレで用を足す。
本当に綺麗好きだった。だけど、夜中になると、ぷぅーわぷぅーわ鳴いて、私を探して甘えていた。甘えん坊な一面も見せる。
可愛い可愛い愛兎。ご近所のおじさんが、ミニにんじんを数本、うさぎのためにくれた。嬉しくて、綺麗に洗ってから与えると美味しそうにカリカリと音を立てて、食べる、カリカリ、カリカリと――
いつまでも一緒に居られるとは思ってはいなかったが、心の底ではいたかった、いつまでもいつまでも。
別れは突然だった。朝、目を覚ますと横たわっていた。信じられなかった、まだ温もりがあったから。
何度名前を呼んでも、動かなかった。大好きなにんじんを口のそばにおいても、食べなかった。
その日にお葬式をした。何も考えられなかった。頭が真っ白だった。
家に帰ってから、空っぽのケージを見つめた。今でも聞こえてきそうな、彼が残した様々な音が。
涙がたくさんこぼれ落ちた。ポロポロ、ポロポロ、止まらない。
心にぽっかり穴が空いたような、喪失感。
なかなか、立ち直ることができなかったのを今でも覚えている――
9/10/2023, 1:05:47 PM