月に願いを
リオが夜空を見上げると満月が輝いていた。
「……」
彼は神を信じないし教会の連中だって嫌いだ。けれどなにかに祈りたい時だってある。
「どうか」
どうか。どうか世界を救えますように。声は出さずに彼は祈る。あともう少しで魔王まで手が届くのだ。人々を苦しめる魔王を倒して残党も全て追い払う。それが彼の旅の目的。
「リオ?」
「ごめんエミリー、起こしたかな」
「ううん。眠れなかったから」
旅の目的とは別にもう一つ、彼には願いがある。彼自身も自覚していないその願いは彼女の幸せ。
修道院で俯いていた彼女の手を取ったときから彼がずっと大事に抱え込んでいる思い。
「エミリー」
「うん」
「勝とう」
魔王に勝って、平和な未来を君と。リオは月に願う。
5/26/2023, 11:37:35 AM