渚雅

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今は閉ざされて見えないアイスブルー。それを思い浮かべながらそっと目尻に触れて唇を撫でて,そうやって夢の国にいる相手の感触を好き勝手に感じてから,最後に額に唇を当てる。


「良い夢を」

数時間後 君と視線が絡む時その時にはまた他人同士。寂しくないなんて嘘でも言えやしないけれど,それが運命なのだから。

恋人が奇病にかかった。前向性健忘症 1日で 正しくは眠ってしまえば記憶がリセットされる病。なんの前触れもなくそんな症状が現れたのが2か月前。それからずっとこうして過ごすことが日課になっている。


「また明日」

本音を言えば記憶を取り戻してくれれば嬉しい。けれど,朝会って状況を伝える度に苦しげに顔を歪める君を見ているから。ただ君との毎日を楽しめるようにひとつひとつ出会い初めを繰り返す。

8/4/2023, 6:50:14 AM