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耳を澄ますと

全ての家事を終わらせ、覚束無い足取りでソファに向かう。腰をおろすと一切の音も立てず深く深く沈んでゆくので、このまま誰にも気付かれず夜と同化してしまうのではと思った。先程から外の世界も静まり返っている。しかし耳を澄ますと微かにカエルの鳴き声が聴こえた。命の音色に心を奪われる。すると何故だろう?消えかけていた心のロウソクが再び強く燃え始めた。私は勢いよく立ち上がり棚からノートを取り出すと、思うがままにペンを走らせた。踊るペン先からは歪なメロディが流れ出し、静かな部屋に響き渡る。そうか、思い出したぞ。この不協和音こそが私の命の音色だったんだ。この音を一生鳴らし続けなければならない。たとえ誰も聴いていなくとも。

5/4/2024, 4:32:32 PM