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何も変わらない毎日。
私は今日も、坂を下りてバス停に向かった。
今日は一日中雨らしい。道路は1面桜の花びらが寂しく散らばっていた。
新しく買った紺色無地の傘をさし、坂を下りきると煩い声が聞こえる。やはり雨だからなのか、今日はバス停に人が多い。最悪だ。これだから雨の日は嫌いだ。私はバス停を何事も無かったかのごとく通り過ぎ、行くあてもなく歩き続けた。
ここら辺で人が少なくて、暇つぶしできそうで、できれば雨宿りができそうな場所をさがす。ふと前を見ると、こじんまりとした公園があった。ついでに雨宿りできそうな場所もある。なぜ今まで気づけなかったのだろうか。私はそこに、吸い込まれるように入っていった。
傘を閉じて屋根の下に入る。ただ淡々と降る雨を、暫くぼーっと眺め続けた。たまに屋根から滴る水滴が、心地よいと感じる。
「何も聞こえない。いいなぁ。」
思わず呟いてしまった。何を言っているのだろう。雨がこんなにも降っているのに、何も聞こえないはずがないのだ。その時、私は気づいてしまった。雨などとっくに止んでいたのだ。
私は公園の真ん中まで歩いて、空を見上げる。太陽も全身隠れた、あまり良い天気とはいえなかった。雨のせいで、桜だって本来の美しい散り方ができずにいる。
「なるほどね。確かに私にとっては、こんな始まり方があっているかも。」
私はもらった卒業証書の筒を眺めた。
「でも私はもう、落ちきった。」

4/21/2024, 3:15:03 PM