かばやきうなぎ

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未来からの記憶




『僕は戦争で死んだんだ。』

確かに自分が命を賭けて産んだはずの子供がまるで他人の人生を自らの命のように語り出す。そんな摩訶不思議なことが身近で起こったらどう思うか。

前世なんて漫画の中のメルヘンな美しいものばかりでは無い。ヒヤリと背筋に汗が流れるような現実があるらしい。
ブラウン管の向こう側でまことしやかに流れる番組を納豆を片手に食い入るように見つめる親を視界の隅に入れながら私も携帯を片手間にそれを見た。

戦艦の乗組員だったという少年が、かつての自分の生き様を語る。有り得たかもしれない、何かの間違いかもしれない彼に残るその鮮烈な悲劇的なその一生の物語は今を生きる小さな命に何を与えて何を奪うのだろうか。

無念さと後悔、置いて逝かざる得なかった家族への思慕を切々と語る目はとても嘘や思い込みには見えなかった。

小さな指はパソコン画面を指差す。
『これが昔の僕』だと。
画面に映るまだ幼さが残るであろう青年の姿はモザイクがかかって画面越しの人間では顔がわからない。
確かにその指先が示す青年はかつての過去を生きてそして船底と共に沈んだ命なのだという。

12歳になった少年は力強い眼差しで語る。
『戦争のない世界の為に生きたい』と。

80年後の未来から、かつての生きた自分に貴方の生きられなかった先を生きますというメッセージのように思えて生きるという事の重さを思いながらテレビを消した。


※昨日の番組見た感想

2/13/2025, 6:14:09 AM