のーとぶっく

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口元に手を当てて 万が一にもバレないように 億が一にも漏れないように 固く叩きつけた手のひらが 強ばった笑顔を貼り付けた

ひみつ、ひみつ、ひみつのはなし
うそつきうそつき嘘まみれ

静かにしてねと笑う横 人差し指を口に立てた
悪魔が高らかに叫び出した 可哀想だと泣き出した

笑顔がうかんだ瞬間に涙がこぼれて消えていく
純粋な瞳の対に 僕の心はおかしいらしい

溢れそうになった思いを 唾液と一緒に飲み込んで 胃液の中で 何も残らなくなるまで溶かしちゃった

理不尽な暴力に 思わずえずいて吐き出して それを見たあいつらは 顔をゆがめて逃げてった

ゲロにまみれたその中に ただ一つだけ真っ白な それだけ汚れず見えていた たった一つの愛言葉

ああ、悪魔が泣く、悪魔が笑う!
狂え狂えと笑い踊って、僕の耳元で囁くんだ

「どうせもう手遅れだ」

探し物の正体も 求めた問の正体も 押し込んでしまった

後悔も懺悔も嫌悪も憎悪も博愛も純愛も失恋も悲恋も絶望も切望も疑念も諦念も

ああもう全部なにもかも 手遅れなんだと嘲笑う

ゲロをぶちまけた僕を見て 君がひきつって口に出した

「だいじょうぶ」

「きみ、なんかへんだよ」

ああ、君への思いを愛と言うなら、

君は僕に何を与えてくれる?

『放課後、教室内で秘密の恋を。』

6/5/2024, 10:30:05 AM