[※hrak二次創作/A成代/FGO×hrak.2.5/BLD]
《諸注意》
※最早別人(キャラ崩壊)/型月産A(中立・中庸)/尻切れトンボ/リハビリ品/
※BLD(念押し/CP要素:成主×鷹)
※濁しているけど軽度の"そういう表現"有り
▷鷹視点
※嫌な予感がしたら[次の投稿]をタップ推奨
[勝ち負けなんて]
作業BGM:『Aidio / エiルiフ』
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──その人物のことを知ったのは、本当はもっと前だった。
いつの間にか忘れていた……"忘れさせられていた"記憶の中に、確かに"貴方"は存在していた。
出会ったのは多分公安に拾われて少し経った頃。個性事故か何かで全く知らない白い部屋に飛ばされ、そこに置かれていたキングサイズのベッドの上で彼は静かに眠っていた。
少しして目を覚ました彼は眠気で蕩けている鈍色の目を瞬かせると、俺の姿を捉えて不可解そうな顔をしていたように思う。そのとき音にはなっていなかったけど口は確かに『けいご』と動いていて、どうしてこの人は捨てたはずの俺の名前を知っているのだろうかと内心首を傾げた。でもすぐに視線は俺の背中に向けられ、酷く驚いた様子で『君は、誰だ』と聞かれた。……寝起きの掠れた声に多少意識が持っていかれたのは許して欲しい。今なら言語化できるが、あんな艶やかな声なんて初めて聞いたのだ。警戒しなきゃいけない状況なのに、不覚にも目の前の大人に少しだけドキドキしてしまって言葉に詰まったのは正直忘れたままでいたかった。今思い出しても恥ずかしい。当時もし羽根が大きかったら、多分自分の体を覆い隠していたと思う。
彼は『言峰零治』と名乗った。とある天文台で働いている技術スタッフらしく、自室で仮眠を取っていたのに目が覚めたら知らない部屋だったという話だった。しかもどうやら個性を知らないようで、俺の羽根を凝視していたのは単に驚いていただけらしい。『大人でも個性を知らない人もいるんだなぁ』なんて思っていた俺は本当に呑気だったと思う。まさか生きている世界──もっと言うと時代すらも違うだなんて夢にも思っていなかったのだから。
その部屋は条件をクリアしない限り出ることのできない部屋だった。『SNSとかでよく見かけたネタじゃないか……』と彼──零治さんは頭を抱えていたが、そのときは『一時間二人で話をしないと出られない』と言った軽い内容だったため、俺としては『それだけ?』などとはっきり言って油断していた。条件をクリアすれば外に出られるし、きっともう会うことは無いだろうと互いに思っていたのに、その部屋へ飛ばされる現象はそこで終わることは無かった。二人揃って『またか』とげんなりした顔をしたが、実のところ、いつの間にか俺は彼に会えるこの現象を密かに楽しみにしていたのだ。褒められたことではないけど、『ヴィランの息子』だとか『ホークス』としてじゃなく、『俺』を見てくれる人だったから。
──だから罰が当たったのかもしれない。
俺が十五を過ぎた頃から部屋の条件は過激になっていった。最初は時間まで話すか軽い接触だけだったそれはいつの間にか性的なものを含むようになり、俺がヒーローとして世に出るようになった頃には、当たり前のように一線を越えることが条件になっていた。勿論困惑はしたけど、でも、俺の中に恐怖心も嫌悪感もほとんど無かった。
『言峰零治』という人は『良識ある大人』だった。条件が過激になるにつれ舌打ちをしながら眉間に皺を寄せ、見ているかも分からない部屋の主に暴言めいた言葉を吐くことはあったけれど、それを俺に向けることは一切しなかった。触れてくる手は苦痛も恐怖も与えて来ず、彼はただ最後まで俺を気遣ってくれた。
『そもそも自分よりも一回り以上も下の若者に無体を強いなきゃいけない条件なのがおかしいんだよ。……だから全部、俺のせいだと思った方が良い。君は被害者なんだから、それを糾弾したって誰も君を責めたりしないさ』
彼は優しい声でそう言うと、ひんやりと冷たい手で、訳も分からず涙を溢す俺の背を撫でてくれた。
────只々、やさしいひとだった。
そのことを、俺は青い小鳥に急襲されるまで忘れていた。
──"駒鳥"は『事象キャンセル兼"個性"返却サービス』などと喧しく囀りながら現れ、その言葉通りAFOに奪われた筈の俺の個性を元に戻してみせた。後に聞いた話だが、イレイザーヘッドの損失した右目と右足すらも『事象のキャンセル』だと言って元に戻してみせたらしい。
そして飛び立とうとする駒鳥の口から発せられた"ご主人"という言葉に痛む身体を無視して慌てて捕まえると、その人物について問い質して────後悔した。
『ご主人っスか? ────世界中のムクドリどもが【AFO】って呼んでた人っスよ? 本人そう呼ばれるのメッチャ嫌そうにしてたっスけど』
『そもそもご主人が"化け物"として"負けてくれた"から『英雄』は生まれたし、世界は『剪定』されずに済んだんスよ。────勝ってたらムクドリ共もこの世界も"無かったこと"になってたっス、文字通りに』
『というか"人生二周目"にこんなクソみたいな宿命背負わされるなんて、あの人も災難っスよね』
『じゃあ今度こそ自壊するっス。良い夢見ろヨッ!』と言って、俺の手の中で完全停止した駒鳥を茫然と見ながら、思い出した記憶に頽れそうになった。
────それってつまり、俺の知ってる貴方は、この世に産まれてからずっと、OFAに殺してもらうために、今まで生きてたってこと?
[勝ち負けなんて──]
最初から無かった。
貴方の負けは決められていて、今世の生きる意味すら死ぬためだったなんて、そんなの────。
────そんなの認められる訳無いだろ。
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習作という名の怪文書()
実は昨日全カットした部分です……(お題に沿ってるとは言ってない)
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6/1/2025, 9:59:32 AM