快晴、それはもう清々しいほどの晴れた空。
心にあった違和感を確かめようと歩を止めて、
そっと振り返ると、晴れ空の下、彼が立っていた。
目が合うと、ゆっくりと微笑む彼に心臓が高鳴った。
「気付いてたなら言ってくれればいいのに」
穏やかに言葉を放つ笑顔からゆっくり後退りすると、彼も一歩、二歩、とこちらへ歩み寄ってきた。
「そんな…」
「今日は天気がいいね」
「どうして」
「快晴って、こういう空のことを言うんだろうね」
問いかけに答えない彼から何か引き出さなくては、
と考え足を止めた。彼も連動するように歩を緩める。
しかし思考をシャットダウンした頭の中は、警報が鳴り響くだけだった。走らなくては、と唯一の信号を脳から足へ呼びかけても、一度後退りを止めたそこは伝達を遮断したかのように動けない。
「さぁ、もういいだろう?諦めなよ。君の帰る場所も知っているよ」
笑みを引っ込めた彼の言葉に耳を疑った。なんで、と声に乗らなかった言葉が頭の中でこだまする。冷や汗が背中を流れ落ちた。
「今度は間違えない。2人で幸せになろう」
いつの間にか目の前まで来ていた彼に手首を握られ、骨の軋む感覚に顔を顰めた。トラウマが呼び起こされる痛みから解放されようと顔を上げると、
快晴に照らされた彼は、もう一度また目を細めた。
4/14/2024, 7:07:03 AM