――どこにいても探してやるから。
帰ってきたら、自室の隅に同居人が落ちていた。
「……は?」
力の抜けた手から書類の入った鞄が滑り落ちる。それに構わずスリッパを脱ぎ捨てて、冷たい床に転がる体を揺さぶる。まさか、何かあったんじゃ。
「おい、どうした? 大丈夫か……」
「、んぅ」
呼びかけに返事があって胸を撫でおろすと、さらりとした灰色の髪が動いてこちらを向いた。起き上がるのか、と思ったのに目が閉じられている。
「……寝てる?」
床で? しかも俺の部屋で?
わけがわからず頬をつつく。嫌がるように顔が逸らされてしまった。
「おーい、起きろー」
「……ん」
果たしてこれは返事なのか、それとも寝言なのか。少なくとも全く起きる気配がない。
「起きねえなら部屋まで運ぶぞー?」
返事なし、と。自室の扉の近くで放り出されていた鞄をクローゼットに立てかけて、散らばったスリッパをはき直す。細身の体の下に腕を入れて、ぐっと持ち上げた。
「こんなとこで寝ると風邪ひくぞぉ」
あと、床で死んだように体を投げ出しているのは本当に心臓に悪いのでやめてほしい。
……今度、部屋に絨毯でも敷いとくかな。
(部屋の片隅で)
12/7/2024, 9:43:38 PM