白いコットン

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君と飲もう、そう思いラムネを買ってきた。

君はこれが好き。

先に木の下で待っていると、小さく手を振りながら

少し山のような草の小道を、走りながらやってくる。

「これ、はい。」ラムネを渡すと、わあっ!と笑って

くれた。

トンッ! ってビー玉を落とす。

ひと口飲んだ君に、僕は言わなければと。

「来たんだ、これが。」

君の手が止まる。表情が消えた。


いったいどれ程の沈黙があったのか。

「 数日で行くことになる…」

「そう… … そっか、、うん…、、」

俯く横顔が青白く見えた。

「うん、、行ってくる。。大丈夫、必ず帰ってくる」



握り締めたラムネの水滴が、君の指を濡らしていた。

その水滴を流すように、光る水滴。


僕は赤紙を握りしめた。

もうラムネは冷たくはなかった。



          〈 ぬるい炭酸と無口な君 〉

8/3/2025, 11:53:29 AM