ふくふくと鼻を動かす犬がいて、嗚呼花粉症、犬は花粉症にならないかしらなるかしら、きっとならないといいけれど、と思ったりして、軽くなった肩と軽くしすぎてそわっとする背筋、歩道の割れ目がふわふわと頼りない色に染まっているのが見えて、新芽に押し出されて歩道に積もった葉はしっとりと湿り、秋から落ちずにいた団栗はもはやその姿もなくけれどしぶとく帽子だけは残り、漂う塵が目に入りそうでまじまじと見つめるのもためらわれるけど、今がチャンスと刈り込まれた街路樹、まだ静かなウロ、粘度を持ってゆれる水、影の色も湿気ていて、あのきっぱりとした境界線を懐かしく思い起こすと、曖昧な境目のほうがよほど恐ろしいのだと思いもする、つい先日残酷なほどに手入れされた土手にさわさわと草が伸びる、虫が渦を描いて飛ぶ、避けながら歩く脇を自転車が虫につっこんでいく、しかも二台も、もやもやとぶわぶわとあらゆる線を塗りつぶす勢いなのに、ここからと線をやたらと意識させられるから困ってしまう。ここもあそこもどこもここも、もわりと塵多い空気に輪郭を溶かすのに。
4/10/2024, 2:56:12 PM