題 理想郷
理想郷に行きたい。
私はふと苦手な数学から逃避するため、そんな事を思う。
理想郷ってどんなところだろう。
まずはね、草がたくさん生えてて、小川の水音が耳に優しくて、大きな木があって、その木陰で私は横になるの。
理想なんだから妖精とかいたっていいよね?
鳥のさえずりもにぎやかで、みたこともないパステルのお花が色とりどりに咲いていて、そこを妖精たちが飛び交う。
日差しは常に春のようで、風は柔らかく私の頬をくすぐる。
そして、私はどこまでも水色と青とそして藍色のような混じり合った空色を寝転びながら堪能する。
飽きることなく、妖精の笑い声を聴きながら。
お腹をすかせることもない。
苦しみも悲しみもない。
そんな私の想像の中だけの理想郷。
桃源郷。
「桃子、何してるの?ボーっとして」
想像に想像を重ねていたら、親友の唯に肩を叩かれた。
「あ、唯・・・」
ハッと気づくと、もう苦手な数学の授業は終わっていた。
その間中空想に浸っていたらしい。
「もう、また何か考え事?次体育だから早く着替えてって」
「あ、うん」
急かされて、急いで体操着を取りに行く私。
でも・・・・歩きながらふと思う。
でも、心の中にはまだ私の理想郷がある。
想像は誰にも壊せない。
その中にいる時は、いつでも心穏やかでいられる。
さっきもそうだったから。
また辛くなったらこの心の理想郷に避難して、滞在しよう。
私はそう密かに心に決めたのだった。
10/31/2024, 3:27:04 PM