「木漏れ日」
夏が近づき、日に日に暑くなってきた。
休日、ふと思い立って車で片道30分程で行ける近くの渓谷へ涼みに行くことにした。
人の手が加わっていない、自然豊かな渓谷。木々の間からは幻想的な木漏れ日が無数に差し込み、川の流れる音と野鳥の鳴き声、木の葉のざわめきがこだましていた。
視線を感じて振り返ると、木漏れ日に照らされるように1人の少女がそこに立ってじっと僕の方を見ていた。
まだ少し肌寒い季節なのに、少女はキャミソールの真っ白なワンピースを着ていた。
僕と目が合うと、ゴツゴツした岩場がある方へ勢いよく走っていった。
「危ないよ!」
咄嗟に、そう叫んで少女の後を追うが、少女は軽々と岩場を駆け抜けていって、ついに見失ってしまった。
すると少女が隠れた岩場の奥から、真っ白い羽の蝶が現れ、木漏れ日の渓谷を優雅に舞っていた。
5/7/2025, 1:27:37 PM