「手放した時間」
「私はまだ大丈夫だから。あなたはあなたのできる仕事をしてきて。」
君にそう言われると、うまく言い返すことができず、ただ頷いて仕事に向かうことしかできなかった。
仕事から帰ってきて君が微笑んでくれると、まだそこにいてくれていることにとてもホッとする。そんな毎日を繰り返していた。
けれどそんな日も長くは続かず、君はいなくなってしまった。
君の言うとおり、僕は僕の仕事をして色々な人を助けてきたと思う。でもその分、僕は君と過ごせる時間を手放してしまっていた。もっと話をして、君の声を、仕草を、笑顔を心に焼き付けていたかったのに。
あの時の僕の判断は、果たして正しかったのだろうか。
手放した時間は、二度と戻らない。
11/23/2025, 2:02:14 PM