#61 遠い日の記憶
過去には、
いくら手をのばしても届かない。
だから、
どれも遠い日ということにはなる。
小さい頃のことは、
良い思い出ほど自分では覚えていない。
あっても思い出すまで少し時間がかかる。
パッと出てくるのは根に持つようなことばかり。
それも忘れてしまえれば良かったのに。
子どもという生き物は、なかなか厄介なものだ。
大人社会の当たり前を知らず、
自分の道理を見つけ、
これが当然とばかりに出してくる。
しかし、しかし。
子どもにとっては
それが本当に当然のことなのだ。
効率より、未来の不利益より、
今この瞬間を楽しむ為に生きている。
生き急いでいると言ってもいい。
その勢いを完全に止めてしまっては、
理不尽に思う気持ちともに記憶に残るだろう。
私のように。
ならば、勢いを殺さず上手く流れていくように、
双方の道理を擦り合わせていくことが、
大人の本来の役目なんだろう。
自分の過去には手が届かないが、
目の前にいる子どもには手が伸ばせるのだから。
子どもが大きくなったとき。
彼らは遠い日に、何を覚えているだろう。
7/17/2023, 1:45:24 PM