りんごまだんご

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「愛梨ってさ、かわいいよね
高校一年生の夏、君がそう言った時には私は大して驚かなかった。ただ、宿題を写させてほしいのかとしかおもわなかった。
「……どこが?」
どうせ答えられないだろう。そうふんで私は意地悪のつもりで聞いてみただけだった。
「えぇ、どこだろ?……字が丸っこいとことか、肌がすべすべなとことか、髪めっちゃサラツヤなとことか?」
その答えは今でも頭から離れてくれない。
ちょっとした意趣返しのつもりだったんだ。
答えられるなんて思ってなかったんだ。
しかも、全文私が烏滸がましくも少しだけ自信を持っていた所だったんだ。
そんなの、嬉しくなるに決まってるじゃんか。かわいいなんて罰ゲームとか、ごますり以外では聞いたこともなかったし。かわいいって本心から言ってくれたのは君だけだったんだ。

 でもさ、正直こんなんになるならそんなの言ってほしくなかったよ。君に会えてかわいいって言って貰えたのは奇跡同然なんだ。いくら髪と肌、服やスタイル、体臭に気を遣っても顔がブスじゃあ本心からのかわいいなんて貰えない。なのに一回その味を知ってしまったら身の程知らずに求めてしまう。そのせいで苦しいんだ。「かわいい」を期待して、その度に世間から「イタい」と言われる。君に連絡しようと想って、そして私と君がただのクラスメイトってだけの関係だったと思い出して寂しくなる。そんな日がずっと続くんだよ。神様おねがいだからさ、また本心からのかわいいが聞きたいな。

10/2/2024, 12:38:28 PM