「体重を減らしたいって訳じゃないんだよね?」
精神科の医師が念入りに確認する。
「はい…怖くて食べれないんです…」
男性なのに体重は36kgになっていた。
「うちは精神科だからさ、具体的な病名を書けないとどうしようもないんだよね」
どうやら拒食症には体重増加への不合理な恐怖が必要らしい。体重が減り続けるのは同じなのに、診断結果は本人の気持ち次第だ。
記憶のランタンに記述されているのは拒食症と摂食障害、あとは過食症。その他の名前のない苦しみをランタンが照らすことはない。ちょっと煤や埃が溜まっているな程度の認識だ。
誰にも理解されないSOS。
こうして人は追い詰められていくんだろうな。
題『記憶のランタン』
11/18/2025, 7:12:04 PM