ストック

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余命宣告を受けた。
あと3ヶ月で俺の人生は終点に辿り着いてしまうらしい。

最初は受け入れられなかった。
俺はまだ17歳だ。
憧れのキャンパスライフも、酒の味も知らない。ギャンブルだって1回くらいやってみたかった。
悔しさと恐怖から俺は荒れた。
見舞いに来てくれる友人たちを罵倒し、見舞いの品を床に叩きつけたこともあった。
友人たちは、当然ながら段々俺から離れていった。
ただ一人、彼女を除いては。

俺の病室を訪れるのが家族と彼女だけになった頃、俺は人生の終点をようやく受け入れつつあった。
彼女とは思い出話をすることが増えた。
初めて会ったときに一目惚れしたこと、思いきって告白したときの彼女のはにかむような笑顔、初めてのデートで出かけた水族館、初めて唇を重ねた花火大会の夜…
話ながらいつの間にか流れていた涙を、彼女はそっと拭ってくれた。

ある日、俺は無理を言って外出した。どうしても欲しいものがあったからだ。
夕方になると、いつものように彼女が見舞いに来てくれた。
俺は彼女に綺麗にラッピングしてもらった小箱を渡す。
彼女は驚きながらも箱を開ける。中にはピンクコーラルをあしらったブレスレット。
「付き合って1年のお祝い、できそうにないからさ。先に渡しとこうと思って」
彼女は俺の手を握り、涙を流した。

そして、俺は今、人生の終点に辿り着いた。
未練がないといったら嘘になるが、それでも彼女に出会えただけでも幸せだった。
彼女が棺に入れてくれた翡翠の指輪を嵌めて、俺は人生の終点から彼岸への橋を渡っていった。

8/11/2023, 9:34:59 AM