NONOZATO

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「美希ー!あっちで写真撮ろ!」
「いいねー!」
「いくよ〜ハイッチーズ」
今日は中学校の卒業式。
友達や家族と写真を撮ったりして、お祝いをしている。
「いゃ〜高校生終わるの早かったね〜」
「ね〜、でもさ〜うちら彼氏いたことなくね?」
「…ッー、いや〜私はいたし…、セイシュン、シタシ」
嘘をつくのが下手くそで、大雑把でいつも明るい私の友達、奈留。奈留とは3年の付き合いだ。
卒業式が終わり一二人で桜の木が何本も生えている川の橋を渡る。
「ねね!あそこに椅子あるからさ、記念にあそこでも写真撮らない?」
「いいね!ちょうど桜の花びらも舞ってるし」
そんな話をしている時、私たちの足元の周りに何かが通った。
「え…なんか、、通った?」
「気のせいじゃない?」
「ワンワン!」
私たちの後ろから犬の鳴き声が聞こえた。
「わッ!」
奈留が右手に握っていたスマホが落ちた。
「え!スマホの画面割れてない?」
「セーフ!」
軽くため息をついて安心した。
「この犬どっから来たんだろ?」
「んーでもこの犬首輪付いてるしなー、飼うにしても難しいな。」
「ですよねー」
そんな時どこからかギターの音色が聞こえてきた。
すると急に犬が走り回った。
「すーごいすごい!めっちゃ走んじゃんww」
奈留がそう言いながら犬を撫でる。
「ねぇねぇ、さっきからなんかの楽器の音聞こえてこない?」
「え、あーうん」
「聞こえてないだろ」
「バレた?」
そうして私は音色が聞こえてくる方向を探す。
「ねぇー!ここから聞こえてくるー!」
「マジ?そういやぁ犬って聴覚いいんだっけ?
「え、そうなの?知らない」
私は動物について詳しくないので適当に返事した。
「あ、本当だここの家からか」
「んー?なんか見覚えある家だなぁ」
「あ!」
「なに?なんかあんの?」
「ここ、あの先輩が住んでるところだよ、、」
わたしたちより2つ年上の女の先輩だ。笑った顔を見たことがなく、すごく怖い。
「うっげー、そんな人に見つかりたくない、早く行こ」
「おい!」
大きな声が、後ろから聞こえてきた。
「ヒッ!」
「何してんだよそこで」
「あ、えっと、綺麗な音色が聞こえてきたものだからつい」
「人ん家の前であんまでけー声出すんじゃねえ」
「はい、すみません」
先輩は前と変わらずずっと怖い。
「あんな先輩いた?、私みたことないんだけど、、」
「いたよ、いっつも屋上行ったら隅っこで座ってた人だよ」
「あー、あんまし屋上行ったことないからわかんないや」
「ね〜ポチ」
「へ?ポチって?その犬のこと?」
「そうだよ、なんかねさっき首輪のとこ見たらポチって書いてあった」
奈留の顔が急に真剣な表情になる。
「どうしたの?気分悪い?」
「もしかしてだけど、その先輩の犬とか」
「いや、ないない、あんなに怖い人だよ?犬なんて飼ってるわけないし」
「だよね〜、いぬなら散歩させるもんね」
「でも、聞いてみる価値はあるぞ?」
私に行かせる気満々でこちらを向く。
「はぁ〜わかったよ、行けばいいんでしょ行けば」
「よろー」
そうして先輩の家に行くことになった私は奈留が抱えている犬を貰い先輩の家のインターホンを鳴らす。
「はーい」
綺麗で優しい声が聞こえてきた。
「(え?お母さん?、あの先輩の?本当に?)あ、あの〜少し伺いたいことがあるんですけどー…」
ドアが開くと黒髪で長く、目がパッチリと開いて綺麗な女性が出てきた。
「あ、あのお母さんですか?」
「はい、そうです」
家の奥から先輩がこちらを覗いている。
「あ、えーとさっきあそこの桜の木の下のベンチに座っていたらこの犬が走り回って来たんですけど…」
「あ!ごめんなさいその犬私の家の犬だわ。今日は散歩に行く暇がなくて庭で走らせてたんだけど、出てちゃったみたいね。ごめんなさい、本当に」
あの先輩のお母さんだとは思えないくらいに綺麗でしっかりした人だ。
「あ、全然大丈夫です、あまり遠くに行かなくてよかったですね」
「今日卒業式?」
「あ、はいちょうど1時間前くらいに終わりました」
「そうなのね!、おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
軽く頭を下げてお礼を言うと先輩が出てきた。
「あ、ありがと」
「何言ってんの元はと言えばあんたが面倒見ずにギターばっかやってるからでしょうが!」
「ごめんなさい、、」
今まで見たこのない先輩の姿を見て私は驚いた。本当にこの人は先輩なのか?
「ありがとうね、まぁ、会えることはもう無いかもだけど、あったらまたこの娘に声かけてあげて、こんなんでも実は可愛いものとか大好きだから!」
そんなふうにお母さんが言うと先輩は頬を赤くしながら軽く頭を下げた。
「それじゃあ私の友達も向こうで待ってるので行きますね!」
「先輩!ギターまた今度教えてください!私もギターやりたいと思ってたので!、あと、一緒に今あそこのベンチで写真撮りませんか?」
「は?なんで私が、」
「いから、いいから!、

「美希ー!あれ?先輩?」
「連れてきた!先輩も入っていいよね?」
「もちのろーん!」
「いくよー、ハイッチーズ!」
そうして私たちは無事に高校を卒業し、桜の花びらがひらひらと舞う中で先輩と記念に写真を撮った。







3/4/2025, 9:35:51 AM