惟新の角部屋

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私は、セーターが嫌いだった。
あのチクチクとした肌触りが、特に。

それなのに母は、決まってクリスマスの時期になると、カラフルなセーターを私にプレゼントしてきた。
最初のころは、「ありがとう!」なんて言って母親の機嫌をとっていたが、思春期にもなってくると、嫌いなものを自分の感情で押しつけてくるようで苛立ちを隠せなくなってきた。

そしてついに、16才のクリスマスで、母親に怒り散らかしてしまう。母は、
「もうそんな時期になったのね…」
なんて苦笑いしながらこちらを見る。
その様子に余計腹が立って、家を飛び出した。
街は10年ぶりのホワイトクリスマスだということで、人も多かったが、それでもモノクロの景色が淋しく感じた。私だけだろう。
何でクリスマスに喧嘩だなんて。葛藤。

走り続け、近くのショッピングモールまでやって来た。すると、ふと汗だくの体が嫌な肌触りを思い出した。チクチク。
そして、コートのボタンを外し、中を見ると、去年のセーターが出て来た。そのカラフルなセーターは、ベツレヘムの星のようにモノクロの世界に色を与えた。
その瞬間、私は母に抱きしめられている感覚で、涙ぐんでくる。私はすぐ家へ帰った。

その後はたやすいことだった。家に帰り、謝って、セーターの編み方を暖炉の前で教わった。私もまた、子供が出来たらセーターをあげようと思って。
雪は、既にやんでいた。

11/24/2023, 10:50:24 PM