そんな寂しさの中…私は暗闇の中ただ正座座りで
ずっと下を向いているだけだった。
「こんな思いするなら…好きになんかならなきゃ良かった」
その時だった。
その静けさに『ピンポーン』とチャイムが鳴り響いた。
びっくりと共に体が跳ね上がる。
慌てて立ち上がるとそのまま玄関のドアを開ける。
「………朔」
そこには……その顔を見るだけで
「おい、あんなLINEされ……彩芽」
その彩芽の目からは大粒の涙が零れていた。
「私好きになっちゃダメだったのかなって…」
抱きしめるとそのままゆっくりと玄関のドアを閉める。
お互いが何も言わない。
ただ…確かめるかのように抱きしめているだけだった。
「俺は好きだよ」
「…寂しいって思っちゃったんだな」
朔のシャツが少しずつ冷たくなる感触が伝わる。
「またなって言ったわけじゃないだろ?」
「…朔」
「俺あの時また明日なって言っただろ?」
笑いながらしゃがむとそのまま上を見る。
「泣くなって、もう泣かせないって言っただろ?」
「けど寂しくて…」
「いて欲しい?離れたくない?」
「…寂しいよ…離れたくないよ…」
その答えにクスッと笑う。
「彩芽。軽くとりあえず荷物まとめて持っていこう」
「え?」
「今日はまたねって言うべきじゃなかったって俺も思ったからこうして引き返してきたんだ。ちょっと渋滞なっちゃって…電池も切れちゃって…」
「彩芽泣かせてるかと思ったら急ごうって思ったんだけど」
「…朔…」
「彩芽、家おいで。明日会社は俺が送っていくから」
「うん」
彼女が涙を拭くと笑顔を見せる。
「この家と少しお別れかな?」
「…え?」
「朔の家行ったら帰らないかも?」
彼女がクスッと笑うと彼も笑う。
「そしたら荷物全部持って俺達の家にいけばいいのさ、またな!って言ってからな」
episode 『またね!』
3/31/2025, 10:29:59 AM