窓に白いきれいな羽根が揺れるのを見た。
ベランダに鳥でも停まってるのかと思い近づいてみると、なんと鳥人が倒れていた。
鳥人を見るのは、子供のころに連れていかれた博物館以来だ。
羽の一つ一つ精巧な模型のそばのパネルに『絶滅した』と書かれていて悲しい気分になったのをよく覚えている。
その絶滅したはずの鳥人が、目の前にいる。
あの模型と同じ、大きな翼と脚を広げて、確かに息をしている。
思わず窓を開き、ベランダに出た。
柵に寄りかかるように倒れる鳥人の近くにに立っても、鳥人は気づかない。どうやら気絶しているようだ。
家に運び込もうとも思ったが、感染症などのリスクを考えると触る事を躊躇してしまう。(だって鳥だし)
だけどこのまま放置するのもしのびないため、軽食を作って置いておくことにした。
キッチンに立つ。
鳥が何を食べるかなんて知らないので、とりあえず家にあった肉と野菜を盛り合わせることにする。
肉を焼いている間は、ベランダの鳥人について考えていた。
鳥人はどうしてうちのベランダにいたのだろうか。
このアパートは市街地にあるし、自分の部屋は最上階でも地上階でもない。
それに、あんなにおおきい生き物が現れたのに、その音に気づかなかったのも不思議だ。
考えているうちに思考はついネガティブなほうに向かってしまう。
果てには、もしかしたらベランダの鳥人は自分の妄想で、戻ったら消えているかもしれない、なんてことまで考え出してしまう。
不安になりながら焼けた肉と余りの千切りキャベツをボウルに盛り付け、ベランダに戻った。
ベランダにはまだ鳥人がいた。まだ目覚めていないようだ。
鳥人のそばにボウルを置き、しばらくその翼に見惚れたあと、部屋に戻る。
しばらくして、バサバサと羽ばたく音が聞こえた。
ベランダを見ると、空のボウルと、数枚の白い羽根が落ちていた。
羽根は綺麗に洗浄して、部屋の壁に飾ってある。
窓から光がさすたびに暖かくきらめく。
窓からそよ風が吹くたびに優しく揺れる。
一ヶ月たってもまだ、あの鳥人について考えてしまう。
【揺れる羽根】
10/26/2025, 6:15:28 AM