かたいなか

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「北東北と北海道はもう降ってて、今20℃超えしてる地域でも、これから降雪の可能性アリな県が一応あるんだっけ?」
南西が夏、中央が多分晩秋か冬、北東が真冬。
どこ基準で「雪を待つ」かで、意味合いが違ってくるんだろうな。某所在住物書きはスマホで調べ物をしながら、ぽつり。
積雪多い雪国は(丁度そこ出身の設定にしているキャラが持ちネタに居るのだが)、毎年毎年の雪片付けで、いっそ目の敵にすらしている方々も居そうだ。
彼らに「雪を待つ」気持ちは有るだろうか。

「……今年は待ってる人も居るんだろうな」
ぽつり。物書きは再度呟く。
なんといっても今年は猛暑で、今月も温暖である。

――――――

とうとう12月も中頃。
ホットココアが……美味しいんだか、暑くてまだアイスでも良いくらいだか、なんなら鍋すらまだ遠いのか、分からない昨今いかがお過ごしでしょうか。
「雪を待つ」がお題とのことで、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某稲荷神社は、不思議な不思議な化け狐の一家が仲良く暮らす、不思議な神社。
引くおみくじは、そこそこよく当たり、買うお守りも少しご利益多めです。
そんな稲荷神社には、善き化け狐、偉大な御狐となるべく絶賛修行中の、末っ子子狐がおりまして、
ぺったんぺったん、週1〜2回、不思議なお餅を作って売って、人間を学んでおったのでした。

そんなコンコン子狐は、ひとりだけですが、人間のお得意様がおりました。
雪国出身、メタい話をすると過去3月3日投稿分でファーストコンタクト、藤森という人間です。
子狐の作る餅は不思議なお餅、心の傷も毒も疲れも、ぺったり絡め取って癒やしてくれるので、
この藤森、コンコン子狐のリピーターなのです。

そのお得意様、藤森が、このたび神社にお参りに来て、こんなことを言いました。
「子狐。おまえ、リンゴは食えるのか」
コンコン子狐、まんまるおめめを輝かせました。
果物です。お供え物です。
狐はああ見えて雑食性でして、お肉の他に、タケノコも果物も大好きなのです。

「リンゴ、りんご!たべる!」
「待て。今じゃない。待て、待……、……ステイ!」

藤森いわく、それは、「雪室リンゴ」、あるいは「雪中リンゴ」なるもののことでした。
「最大産地の青森はじめ、秋田や山形、長野でも、つまり複数の積雪地域で作られているものだ」
尻尾ブンブン、おめめキラキラで突撃してくる子狐を、藤森なんとか押さえながら言いました。
「雪が降って、積もってからの話になるが、その中にリンゴを埋めて冬の終わりに掘り出すと、埋める前とまた違った甘さのリンゴになる。
実家の母が、今年自家製に挑戦するらしくてな。日頃餅で世話になっているから、どうだと思って」

「雪!いつふるの?いつ、つもるの?」
雪も大好きなコンコン子狐。振ってる尻尾が完全に扇風機かハイスピードメトロノームです。
東京から一歩も出たことがない子狐、雪国の雪がいつ降るか、いつ積もるのか、さっぱり分かりません。
でも、雪が降れば、どうやらセッチューリンゴなるものが、どっさり食べられるようです。
「雪自体は、もう降っている。必要量積もるのも、時間の問題だろう」
藤森は言いました。
「雪中リンゴを取り出すのは、まだまだ先の話だ。
……ともかく、食えるんだな。分かった」

スマホをポケットから取り出して、ポンポン何かメモをして、数度頷いてまたポケットにしまって。
「期待はするなよ」
藤森、お賽銭して帰る前に、ぽつり言いました。
「なにせ、今年は暖冬だ」

コンコン子狐、子供なのでダントーを知りません。
でも、ともかく、「雪が降ればセッチューリンゴが食える」と、しっかりガッツリ学習したようです。
「雪、ゆき!」
子狐コンコン、セッチューリンゴを食べたことがありません。東京に雪降らぬ今から既に、楽しみで、楽しみで仕方ないのです。
「雪、まだかなぁ、明日かなぁ!」
尻尾をブンブン振りながら、なんならぴょんぴょん跳ねながら、気持ちがフライング気味な子狐は、雪国の雪を待つのでした。
おしまい、おしまい。

12/16/2023, 2:09:45 AM