海老body

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 生粋の都会っ子だった。
 生まれも東京。育ちも東京。親戚も全員東京近辺に住んでいるから、30を超えた今でも、都会と呼ばれる所から出たことは無かった。
 旅行で他県に出たことはあるけど、虫との遭遇がとにかく嫌だったから、基本栄えている場所にしか行かない。九州の辺りの温かい場所、無理。沖縄とかもう論外。
 そんなこんなで過ごしてきたこの30ウン年。けど、まだ見ぬ地"田舎"に、少し憧れを抱いていた時もあった。

 中学生の時、おじいちゃんが東北の方に住んでいるという友達から、毎回長期休み明けにそのおじいちゃん家の話を聞かされていた。

「本当におじいちゃん家の辺り田舎だからさー、マジで家がポツポツくらいしか無くて。いくら騒いでも大丈夫なくらい?」
「相変わらず雪がもう凄くてさあ、膝くらいまであんの。長靴履いてったのに、中まで雪が入り込んで、それゃもう冷たすぎて地獄だったわw」
「日本母屋って感じの家でね、流石にやっぱボロっちいのよ。でもでも、囲炉裏とかあってさ!実際に見るとやっぱ感動するのよあれが。」

 いくら寒いとはいえ田舎だから絶対虫いるし、交通とかそれはもう不便そうだし。だけど、そこには私の知らない景色や体験があって。いいな、なんて柄にも無く思ったけど。
 いやでも、やっぱり、やっぱり!虫がいるっていうのが本当にダメ。無理。わざわざ進んで不便なとこに行く必要も無いしね。一生コンクリートジャングルでぬくぬくしよう。そう、思っていたのに。

「……なぜ…」
「おーい、嬢ちゃん。荷物置けたかぁ?早速だけんど、こっち手伝ってくれんね?」

なぜ、こんな九州のど田舎に……


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『田舎的な部屋』


4/3/2023, 5:22:53 PM