西の護符屋

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 夜に窓越しに見えるもの。それは気合いの抜けた年齢相応な私の顔。そんじょそこらの幽霊よりも恐ろしい。

(そう、思っていたんだけどな。)

 鏡のようになった課長の後頭部の横に、ふさふさした猫の頭が見える。残業中とはいえ、職場に猫はいない。
 そして課長に相談している同期の窓に映る顔の横には、私の顔がもう1つ見える。私の顔がもう1つって何だ。

 そういえば昼休みに、飼い出した保護猫が可愛いと課長が写真片手に惚気ていた気がする。猫に可愛いと好感を抱いている課長。大好きな飼い主を得た猫。正直どっちの仮定でも良いが、自分が関係するとなると話は違う。
 
(この場合、矢印がどっち向きかが問題なのよ!)

「おい。ちょっと呑んで帰ろうぜ。」

 降ってわいた超常現象と最近気になる人からのお誘いに、頭がいっぱいいっぱいになりながら、なんとか笑顔で頷き、ノートパソコンを閉じた。

 これは、疲れか、呪いか、祝福か。

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 運命の赤い糸か見える人が居たとして、それがそうだと気づくのにはおそらく時間がかかったろうなぁと昨日のテーマで思っていました。

7/1/2024, 12:00:31 PM