作品No.254【2024/12/10 テーマ:仲間】
「何してんだよ!」
ソウヤが、俺に向かって叫ぶ。俺は振り向いて、
「見りゃわかるだろ」
と、返答した。俺を見るソウヤの顔は、怒りと戸惑いに満ちていた。
「わかんねえから訊いてんだよ!」
「そうだよ、ミヤオくん! 何のつもりなの⁉︎」
数日前に怪我をしたソウヤに肩を貸しているカヤマの顔もやはり、戸惑いの表情だ。俺は、そんな二人に首を傾げる。
「ただ食事してるだけなんだけど……何かおかしいのか?」
「……お前、本気で言ってんのか?」
「ミヤオくん……本当に、どうしちゃったの?」
二人の顔に、また別の色が浮かぶ。それは、理解し難いモノを見るような表情だった。長年一緒にいたはずの俺に向ける表情ではない。
「ミヤオ、お前——今自分が何食べてるかわかってんのか?」
ソウヤが、言いながら腕を動かす。その腕は、細かく震えていた。
「〝それ〟——」
ソウヤの指が、震えながら俺の持っているモノを指し示す。
「キシじゃねえかよ……」
〝キシ〟が、イコール、俺達三人と行動を共にしている仲間の一人だと思い至り、俺は手に持ったそれを見下ろした。それは、目を見開いたままのキシの首だった。右頬だけが欠損している——まるで、何かに喰われたように。
「何で、仲間を食べてるんだよ……」
「キシさん——ミヤオくん、何で……?」
呆然とするソウヤとカヤマだが、正直俺も呆然としていた。
キシは確かに仲間——のはずだ。それを俺は、どうやら殺して喰っているらしい。〝何でこんなことをしたのか?〟なんて、俺が一番知りたいくらいだった。
だが、どこかで冷静な俺が告げている。その冷静な俺が、俺の体を乗っ取るように口を動かした。
「仲間だろうがなんだろうが——」
そうか、俺は——いや、〝俺だけ〟が違ったんだな。
俺は、〝仲間〟じゃなかったんだ。
「腹減ったら、喰うのは当たり前だろ?」
12/10/2024, 2:47:40 PM