川柳えむ

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 お屋敷に双子の綺麗な女の子が生まれました。名前を蝶子、花子といい、蝶よ花よと、それはそれは可愛がられて育ちました。
 二人は自分達が美しいことをよく知っていました。自分達は美しく、全てを持っている。だから、何をしても許される。そう思っていました。実際、両親は何をしても許してくれたし、屋敷の人達も二人を咎めるようなことはしませんでした。

 ある日、蝶子は道で足の悪いお婆さんと出会い、ぶつかってしまいました。カッとなった蝶子は、お婆さんに暴言を吐きかけました。
「足の悪い人間が私の前を歩かないでちょうだい! 私が怪我をしたらどう責任取るのよ!」
 一緒にいた花子は喋ることが大好きなので、お婆さんに更に激しい暴言を吐きかけました。
「歩くことすらできない、迷惑をかけることしか脳のないお年寄りさん。せめて邪魔にならないよう死んでくれないかしら?」

 その晩、蝶子と花子は酷い熱に冒されました。本当に燃えてしまうかと思うような熱です。
 そして目が覚めると、蝶子は空を舞う蝶に、花子は物言わぬ花になっていました。
 困った蝶子が屋敷の外に出ると、遊んでいた無邪気な子供に捕まり、羽を毟られてしまいました。
 動けない花子は、屋敷の人に、綺麗な花だと根本から手折られてしまいました。

 蝶は羽を失い、花は枯れ、美しかったその姿は無惨にも散ってしまったのでした。


『蝶よ花よ』

8/8/2023, 10:40:46 AM