もんぷ

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空恋

 空を愛しているこの自分の想いは、絶対に外に出すつもりは無かった。家族愛的なほのぼのしたものや、友人愛、親愛のような受け入れやすいものに言葉を変えて、自分の想いの半分さえ伝えられないくらいの断片的で抽象的なものをちょくちょくプレゼントしていた。もちろん、恋に臆病な彼女は自分の感情に気づくはずもなく、平穏な日々を迎えていた。歪んだ想いばかりぶつけられて、人間の醜い部分ばかりを見て傷ついてきた空だからこそ、自分のこの純粋とは言えないドロドロとした感情を目にした時には壊れてしまうなんてことは予想がついていた。

 プリンが好きな空。しかし、彼女はカラメルが大嫌いだ。だから、苦いカラメルの部分は自分が食べて、空は甘いところだけを頬張る。おいしいね、なんて無邪気に笑う空を見て自分も微笑む。これでいいのだ。空は甘い部分だけを食べて、自分が苦い部分をもらう。それと同じように、空は優しくて綺麗な世界だけを見ていてほしい。苦くて、辛くて、気持ち悪いものは空には必要ないから自分が全部請け負う。そう思っていたのに。

 大好物のプリンでさえ1人で食べられない空が恋をした。自分以外の人に。なんて、こんなこと、信じられるだろうか。

7/6/2025, 11:59:55 AM