こぼれたアイスクリーム
ジリジリと日の光が照り付け、焼けたアスファルトが反射する熱気に茹だる僕は、いつもの駄菓子屋に駆け込んだ。この身体に籠った熱をなんとかしたくて、バニラのアイスバーをすぐさま手に取った。このアイスバーには、あたりとはずれがあり、あたるともう一本貰える物だ。
僕は、駄菓子屋の前にあるベンチに腰掛ける。購入したそれの包みを取って、口に放り込めば、先程までの暑さも、少しはマシになったような気になった。
「はぁ〜、暑い。こんなにも暑いと干からびちゃいそうだ」
「全く、その通りだね」
「え!? 」
独り言のつもりで呟いた言葉に、返事が返ってきたことに、僕は驚いて隣を振り向く。隣には、僕と同じクラスの火野さんが座っていた。彼女の手にも、僕と同じバニラのアイスバーが握られていて、目的は僕と同じことが分かる。
火野さんはアイスの包みを取ってアイスバーに頬張る。火野さんの持つアイスバーは、この暑さのせいか既に溶け始めている。その溶けたアイスが、火野さんの腕を伝って、流れていく様子に思わず見つめてしまう。
「最近暑すぎて、アイスでも食べないとやっていけないよね」
「そ、そうだね」
アイスを食べ進めていくうちに、火野さんも溶けたアイスに気付いた様子で、垂れたアイスを舐めとるが、取り切れなかったアイスが、肘まで伝って今にも落ちそうだ。
「あ、あの。火野さんアイスが……」
「あ! アイスが! 」
アイスが垂れているよ。という僕の言葉を遮って、火野さんが僕にそう言うと同時に、太腿の上に冷たいものが落ちてきた。
火野さんを見ていたせいで気づかなかったが、僕のアイスも溶けてしまって、バーから落ちてしまったようだ。
慌てた火野さんは、食べていたアイスバーを口に押し込み、駄菓子屋のおばあちゃんに拭くものを貰いに行った。
残った僕は、零れ落ちたアイスを見て、なんだか虚しい気持ちになった。
僕の手に残ったバーにはあたりと書いてあった。
8/12/2025, 8:19:23 AM